男女比に見るカメラマン人口の考察 〜2015年日本統計年鑑より (2)

デジタル化が進んだ写真業界で、ずっと増え続けている女性カメラマンの人数。
2015年版の統計年鑑で発表された2010年のデータによって分かったことは、右肩下がりで減少を続ける男性に対して、女性が着実に増加しているということでした。

今回は、年齢構成別のデータを見ながら、さらに実情を探っていきたいと思います。

まず、前回の投稿で紹介した2010年データを見ると、女性総数の17,230人に対し、男性総数は48,310人。
女性が増えているとはいっても、全体としては男性カメラマンの方が約2.8倍も多いということがわかります。

そこで、まずご覧いただきたいのが、2010年の男女年齢構成別人口のグラフです。

男女年齢構成別人口2010ssize.JPG

注目すべきは、20〜24歳の人数比です。
男性1,480人に対し、女性はなんと2,830人。
女性の方がほぼ倍の人数なのです。

ほかの世代では、20代後半で拮抗する男女比が、30代以降は男性が大きく差をつけ多数となります。

5年前である2005年データでも、15〜24歳までの層では女性の方が同様に多かったことを見ても、若いカメラマンは女性が多いということが分かります。

女性の写真家,映像撮影者数の変化 (2005年と2010年)s.JPG

それでは、一方の男性はどうでしょうか。
こちらの人口は、5年前と比べると40代までのすべての層で減少していることがわかります。
対象となるカメラマンも年を重ねていますので、5年前のデータ比のでこぼこについてはもっと精細な対比が必要かと思いますが、このままの人口動態では、男性カメラマンの高齢化が進行していることがわかります。

男性の写真家,映像撮影者数の変化 (2005年と2010年)s.JPG

このところ周囲の気になる話で、これまで雑誌などで活動してきたフリーカメラマンが写真業だけではやってゆけず、ライターなど業務を広げたり、ほかのアルバイトをしたりしているということをよく聞きます。
フリーライターや編集者の方も同様で、これまであった雑誌がどんどんなくなったり、予算を縮小したりしていることによるものです。
私の先輩や同世代のカメラマンは、雑誌など、出版関係を中心に活動をしてきた男性が多くいるので、こうした現状が人口動態に反映されているのか気になります。
今まさに働き盛り世代の男性カメラマンの人数とはどうなっているのでしょうか。

ここでは、会社組織などに属していれば定年となる60歳まで(15〜59歳)の総数で比べてみることにしました。
すると、2005年は43,752人の男性カメラマンがいたのに対し、
2010年は39,870人に減少しているのです。
5年で約4000人が減ってしまったことになります。

その一方で増え続ける、若手女性カメラマンたち。
この変化をどう見ればいいのでしょうか。

ここらからは私個人の推論になります。

私自身が現在の家族写真を中心とした出張撮影形式のサービスをしていて、市場や同業他社(者)を見てきた体感としていえることは、個人で写真撮影を依頼するお客様が増えてきているということです。
これまでは、フィルムなどのコストや現像時間がかかるため、人件費と合わせると金額も高くなり、個人で撮影を依頼する方は特別なときに限られていました。
それがデジタル化によってコストが減ったことや、フォトブックなど各人が思い思いの写真セレクトや好みのデザインで自分仕様のアルバムを手軽に製作できるようになったことなど、さまざまな要因が重なって、個人依頼の写真マーケットが大きくなったといえるでしょう。
それに伴い、個人を対象とした撮影サービス業に参入する企業や人たちが増えていますが、それが女性カメラマンなのです。
家族写真をはじめ、ウェディングやマタニティフォト、メイクをしてのプロフィール写真やドレスを借りての記念写真など、依頼者の多くが女性であることから、頼みやすく共感を得やすい女性カメラマンに対するニーズが高まったことがひとつの要因だと思われます。

ウェブサイトなどで女性カメラマンの方のプロフィールを拝見すると、OLや保育士など、もともとは異業種の仕事に従事したものの、出産やさまざまな契機によって専門学校などで写真を学び、写真業界に参入した方たちが多いことに驚きます。
ニーズの増加を身近に感じた女性たちが、軽やかに転身して写真業界に参入してきている現状が、女性カメラマンの増加に表れているのではないでしょうか。

ただ、ここで注意をしておきたいのは、ここでいう「カメラマン」とはあくまでも自称であり、所得や納税金額とは結びついていないため、俗にいう「食っていけてるのか」という問題とは別物だということです。
これは男性にも言えることなのですが、所得が少額であっても、ご本人が申告すれば「カメラマン」です。

資格が要らず、参入しやすいと思われる撮影サービスは、個人で小さく事業をするいわば「プチ起業」で始める方も多いと思います。
しかし、「プチ起業」は、収入もプチ(少額)なことが多いといいます。
軌道に乗せるまでには時間もかかりますし、満足のいく収益規模は人によって違います。
そうした状況もふまえながら、若い女性カメラマンが増えているということは、個人でチャレンジができるフィールドであるということがいえるかもしれません。

一方の働き盛りの男性が減っているのは、従来の写真ビジネスのやり方で一家を養ってきた人たちの収入が減り、カメラマン1本で食べられなくなってしまったとみることができるかもしれません。
これまでの投稿でも何度か述べてきたことですが、デジタル化によって写真の単価が低下し、撮影の仕事も減ってしまいました。
変化に合わせて続けているカメラマンがいる一方で、見切りをつけて転身した人もいることでしょう。

「収益」という経済的な面に焦点を当ててみると、統計の裏にある実情が浮かび上がるのかもしれません。
人口の増減という数字だけを取り上げる限界もここでは指摘しておきたいと思います。

統計資料出典: 総務省統計研修所(2015) 「第六十四回 日本統計年鑑 平成27年」、「23- 1 文化関連職業従事者数」、総務省統計局

 
| Sayuri Inoue | 【コラム】 「カメラマン人口について」 | 09:55 | comments(0) | - | - |
カメラマン人口〜2015年日本統計年鑑より (1)

カメラマンの人口動態について、総務省統計局の日本統計年鑑をもとに、ここ数年ひとり統計ウォッチングをして考察をしてきたわけですが、ふと気がつくと2015年版の統計年鑑が公開されているではありませんか。
今回発表された最新データは、2010年のものです。

この2010年には、大きな意味があると思っています。
というのも、2010年とは、写真業界におけるデジタル化への転換期が過ぎ、業界内のビジネス再編が進んだ時期であり、カメラマン個人も大きく対応を迫られたからです。
2年前の投稿にもあるように、21世紀になってから写真業界はデジタル化の波が押し寄せ、前データが扱った2005年とは、大手ストックフォトエージェンシーのM&Aが進んだときでした。
2006年になると、誰でもストックフォトとして写真販売ができるPIXTAがビジネスを開始。
これによって、いわゆるプロではないカメラマンもストックフォトビジネスに参入できるシステムができ、それまで写真業界にあった既存のビジネスモデルは大転換を迫られたのでした。
当然ながら、プロカメラマン側もデジタル化への対応を求められます。
2005年のデータでは、カメラマン総人口は減少しているものの、女子の人数だけを見れば増加しているという現象が見られたのでした。
その後、相対的に写真の使用料は安くなり、紙媒体が減り、新規参入者も増えたこの業界。
どんな変化があったのでしょうか。

なお、これまで国勢調査の職業は「写真家」として記載されていましたが、2010年データの表記は「写真家,映像撮影者」となっています。
この変化が、数字にどのような影響を与えているかはわかりませんが、ここではそのまま比較することにします。

写真家,映像撮影者数の推移  (1995-2010年)ssize.JPG

2010年における「写真家,映像撮影者」の総数は、65,540人。
2005年の64,446人と比べると、1000人以上増加しています。
デジタル化によって、カメラマンの淘汰が進んで減ってしまったのでは・・・という推測もありえたわけですが、どっこい増えている。
とくに、男女別で見ると、男性が右肩下がりで減少し続けている一方、女性は右肩上がりで増加しています。
女性の新規参入が多く、カメラマン総人口を押し上げているということでしょうか。
新規参入が増えたということは、デジタル化が従来あったそのハードルを下げたともいえるでしょう。

次回は、その男女別の変異を詳しく見ていこうと思います。 →続きの「男女比に見るカメラマン人口の考察 〜2015年日本統計年鑑より (2)」はこちらから。
| Sayuri Inoue | 【コラム】 「カメラマン人口について」 | 23:30 | comments(0) | - | - |
プロカメラマン人口〜2013年日本統計年鑑より

プロカメラマン人口について、前の投稿にあるように、国勢調査による統計をもとに、大正9年(1920年)から平成12年(2000年)の推移を調べたことがありました。
80年間、ずっと継続してその数は増加してきたことがわかったのですが、デジタル化が進んだ2000年以降の数字はどうなのかは疑問のままでした。
その疑問が、最新の統計によってわずかながら判明しました。
「わずか」というのは、最新の統計でも2005年のものなので、激動のデジタル化真っ只中の時期にあたります。
ストックフォト業界の再編でも述べたように、2005年から2006年は、大手ストックフォトエージェンシーのM&Aが進んだターニングポイントともいえる年です。
ですから、2005年以降の推移が本当は気になるのですが、そこは今後のお楽しみにしつつ、2005年までの推移を見てみたいと思います。
(出典は、今年発刊の「第六十二回 日本統計年鑑 平成25年」です。)

プロカメラマン人口の推移m.JPG

ご覧のように、プロカメラマン人口の総数は、2000年の約6万6千人(66,412人)をピークに減少し、2005年は約6万4千人(64,446人)です。
男女別に見てみると、2000年から2005年にかけて、男性が4千人減少して総数を下げている一方で、女性は2千人の増加。
1995年から比べると、カメラマンとして就業する女子の数は着実に増えているのがわかります。

さらに、同じ統計にある年齢別人口構成を見ると、おもしろいことに気づきます。
2005年では、10代と20代前半のプロカメラマンは、女子の方が多いのです。
15〜19歳では、男子88人に対して、女子は255人。
20〜24歳では、男子2,144人に対して、女子は2,610人です。

年齢構成別カメラマン人口2005年.JPG

その後の世代では、圧倒的な数をおじさまが占めているのですが、30代前半まで女子人口は2千人以上であり、他年代の女子より多いのが特徴です。

この数字が意味するところを推察すると、やはりカメラ女子ブームの影響があると思われます。
「カメラ女子ブームの考察」の投稿で触れましたが、女子向けカメラ雑誌である「カメラ日和」創刊が2004年ですから、それまでに女子が写真を楽しむ状況が醸成されつつあったといえます。
デジカメ全盛となった2002年に、フィルムインスタントカメラのチェキ復活を仕掛けたヒットメーカーで、富士フィルムでマーケティングを担当されていた吉村英紀さんは、当時の20代女子がヒットのキー層だったと語っています。
ほぼ日刊イトイ新聞のインタビューで、彼女たちが「高校生のとき、自分たちなりの楽しみかたで「「写ルンです」を使い出した世代」であったこと振り返っています。
吉村さんはそんな彼女たちに注目し、フィルムの需要を掘り起こすべく、彼女たちのニーズを大切に汲み取って商品や現像所サービスの展開につなげていったことがわかります。
若くして写真に親しんだ女子たちの中に、職業選択としてカメラマンがあったことは自然なことだったのでしょう。

2005年以降のプロカメラマン人口の増減は、この若い女子世代と、大きな割合を占める30代から50代という働き盛り世代の男性がカギとなると思われます。

自営業であれば定年がないこの職業。プロカメラマン人口の7%にあたる80代のスーパーシニアカメラマンのように、健康でずっと仕事を続けられたらいいですね。

関連投稿記事: 「プロカメラマン人口について」(2012.12.5)
統計資料出典: 総務省統計研修所(2013) 「第六十二回 日本統計年鑑 平成25年」、「23- 1 文化関連職業従事者数」、総務省統計局

追記:
その後、2015年に「第六十四回 日本統計年鑑 平成27年」が発刊され、そこに掲載されている2010年のデータをもとに
「カメラマン人口〜2015年日本統計年鑑より (1)」(2015.5.23)を投稿しました。

 
| Sayuri Inoue | 【コラム】 「カメラマン人口について」 | 15:26 | comments(0) | - | - |