競馬取材

スポーツの秋、週末になるとあちこちの競技場で競技試合や大会が開催されていますね。
競馬も秋はシーズンで、毎週のように大きな大会が行われています。
私にとっては、仕事をするようになってから初めて訪れた場所のひとつが競馬場で、通信社や雑誌の仕事で何度か取材に出かけました。

私が訪れたのは府中にある東京競馬場。
最初に足を踏み入れた時は、芝が目の覚めるような緑できれいだったことと、馬場内には子どもたちが遊べる広いスペースがあったことに驚きました。
それまでなんとなく怖そうなところと思い込んでいたのですが、子どもが楽しめる工夫がたくさんあってほっとしたものです。

撮影場所は、スタンドの上階から俯瞰で撮ることもできますが、メインのレースは、コース周りのゴール付近で構えます。
通信社の取材でG1レースを撮りに行った時、報道関係として案内された経路は地下道を通っていくものでした。
建物のエレベーターで地下へ下がってから廊下を進むと、そこを横切る広い通路に当たります。陸上競技場のトラックにある舗装材のようなものが敷かれており、そこを馬や騎手がカポカポと通っています。
そのゆるやかな傾斜の通路をずんずん進んでいくと、ぽっかりと空が開け、出たところは場内でした。
カメラポジションを探さなければなりません。
ゴールシーンを撮る場所は、競馬も陸上でも一緒ですが、ゴールの向こう側のコース脇に構え、ゴールに向かってくる選手や競走馬の正面を狙います。
そこでゴール脇へ向かって進んでいくと、競馬取材のルールがあることが分かりました。
一番いい場所であるゴール付近は、長年競馬を撮影している専門カメラマンの方々が座ります。
その次にスポーツ新聞や専門誌のカメラマンが並び、たまにしか来ない私のような若輩者は、ゴールからずっと離れた末席に座ることになるのです。
こうしたルールは、スポーツでも業界ごとに独特なものがあります。
限られた撮影場所で優先順位を決めなければならない場合、キャリアやその業界への貢献度で決める方法は賢明だと思いました。

いよいよメインレース。 コース沿いにびっしり並んだカメラマンの列の中、500ミリレンズでファインダー越しにゴールをのぞくと、やっぱり距離を感じます。
ちょっと小さいなあと思いながらバシャバシャバシャ。
スタートからほんの一瞬で目の前を駆けたいったかと思うと、ゴールもあっという間で、馬の動きは想像以上に速いものでした。

終わってから、一番ゴールに近い撮影ポジションへ行ってみました。
ここだったらどんな写真が撮れるか頭の中にイメージを巡らしながら、さっきいた場所からここまでの距離がものすごく長く感じるのでした。
| Sayuri Inoue | 【体験記】 「通信社にて」 | 00:00 | comments(0) | - | - |
空港取材

 

オリンピックが終わり、競技を終えた選手が次々と帰国するたびに、空港の様子が報道されていましたね。

外国との往来に必ず海を越えなければならない日本では、こうした空港での撮影が意外と多いものです。

 airplane s.JPG

私も通信社で写真を撮っていた時には、成田や羽田空港へ到着の様子を撮りに出かけたことがありました。

報道機関には取材証があり、空港で開かれる記者会見など、通常入れない場所へのアクセスがあります。

成田空港は都心からの移動時間がかかるので、よほどのニュース性がないと行きませんでしたが、日本到着後の出待ちのシーンを撮る時は、出迎えの人たちに混ざって撮ります。

定刻通りにならないことがほとんどですので、待つのが仕事のようなもの。実際にシャッターを押すのはわずかな時間だったりします。

 

そんな成田に比べると、外国通信社は羽田空港へ行く機会の方が多いです。

今でこそ羽田も徐々に国際化が進み国際便が乗り入れていますが、国賓などの海外の要人は、昔から羽田に到着します。国家元首などの外国訪問はその国にとっては大きなニュースになりますので、ビジュアル的にわかりやすい空港での写真は売れるのです。

よく、アメリカの大統領など国家元首を乗せた国営機が着陸する様子が映った後、ドアが開いたら大統領が笑顔で手を振り、タラップを降りて出迎えの人たちと握手をする様子をテレビで見ることがありますよね。撮りに出かけるのはあのシーンです。


車で羽田空港へ行かれた方はご存知のように、空港周辺の道路はとても複雑です。そのうちの1本が、空港取材の受付場所へつながっています。鉄の門がある殺風景なところで、ここでセキュリティチェックを受け、空港職員らしき係りの方と一緒に着陸時刻まで屋外で待機するのです。

 

初めて羽田空港へ取材へ行くという日、先輩のカメラマンが持っていく機材を教えてくれました。

カメラのボディや基本レンズに加え、500ミリの望遠レンズと一脚。

これに、500ミリレンズに装着してより望遠側で撮影する事が可能になるテレコンバーターという補助レンズも加えます。

そして、3段の脚立。

2段のものは肩にかけても脇におさまるのですが、3段は脚の部分が自分のふくらはぎや脛に当たり何とも歩きにくい。カメラバックを斜めがけにし、片方に一脚をくっつけたレンズケースを提げ、もう片方に脚立を持って、ふらふらと移動するしかありませんでした。

 

そんな装備で空を眺めながら他社のカメラマンの皆さんと待機。

「あれだね」と皆が向く方を見ると、飛行機が見えます。だんだん近づく機体をぼんやり見ていた時です。

 

「はい、どうぞ」の声がしたかと思うと、一緒にいるカメラマンが一斉に走り出したのです。

「ええっ??」

なんだか分からないまま反射的に機材を抱え、皆の後を追いかける私。

だだっぴろい滑走路のアスファルトの上に躍り出ると、遠くにぽんぽんとポールが置いてあります。どうやらそこが所定の撮影スポットで、皆そこを目がけてひたすら突進。その手前に着くと、みんな並んで脚立を立てています。

私もゼイゼイしながら端っこに脚立を立てると、他のカメラマンがするように大急ぎで撮影の準備をし、脚立のてっぺんに座って望遠レンズをのぞきます。

するとほどなく、はるか遠くながらも我々のほぼ正面に飛行機が横づけで停まり、ドアが開くと中国の胡錦濤主席(当時)が登場。どーんと立ってにこやかに手を振ると、夫人と一緒にタラップを降りる。その様子をずっと黙ってぱしゃぱしゃとシャッターを押す私たち。

一行が屋内に入ってしまうともう撤収で、また大荷物を持って、とぼとぼと元いた場所へ戻ります。

引き返しながら、よく大荷物でこの距離を走れたなぁと、自分の「火事場のばか力」に驚いていました。

 

どんどん改装が進む羽田空港で今もあのダッシュをやっているのかわかりませんが、空港のニュースをテレビで見ると、撮っているカメラマンに思いがいってしまいます。

| Sayuri Inoue | 【体験記】 「通信社にて」 | 13:22 | comments(0) | - | - |